日曜日のこと

Sさんご夫妻とは、ある工務店の紹介で知り合あった。

というのは、私たちはある一時期、家を持ちたいと切望し、不動産屋や工務店、設計事務所などを熱心にあったっていたことがあり、そのとき工務店のうちの一軒が施工例としてSさんの家を紹介してくれたから。もう5年以上も前のできごと。

営業マンと一緒に伺ったとき、主のSさんは隣の畑で仕事中だった。事情を聞くと仕事を中断し、どうぞどうぞと私たちを家の中に招き入れてくれた。

家の外観は、京都の蔵を思わせるような白い塗り壁に黒い屋根瓦の純和風。中に入ってみると、綺麗な色の壁やモダンな家具に彩られた外観とは別の世界が広がっていたのにはいたく感激した。

家作りのエピソードなんかも織り交ぜながら丁寧に部屋を案内してくれたSさん。突然の訪問だったのにリビングだけでなくプライベートな空間まで見せてくれた。農業を仕事にされているので、玄関からリビングに入る途中に手洗い用の小さなスペースが設けられていて、そこに清潔そうなハンドタオルが数枚並べられていたのがすごく印象に残っている。

それが出会い。

その後、いろいろあって私たちの持ち家熱は冷めていき、工務店とのお付き合いは自然消滅した。だけど、Sさんとは縁あって今もお付き合いさせてもらっている。

日曜日、そのSさんのお宅に久しぶりにお邪魔した。

以前はご夫婦でアクティブに仕事をされていたけれど、お子さんが生まれた今は奥さんは育児と家事に専念しているとのこと。「子どもが小さいのは一時のことだから、ゆっくりと見させてもらおうと思って。」と柔らかに微笑む奥さんの顔が眩しかった。今ある環境をじっくりと味わいながら、心から楽しんでいる様子。大切に思うことをちゃんと大切にして生活しているんだなあと感じた。

この頃は、みかんの収穫がはじまったところだそうで、天気がよかったこの日はSさんにとっては仕事日和だっただろうに、「こういうことがないと休みがないからね。」と言ってくれるご主人。ゆったりと構えている。営業マンと突然お邪魔したあの日に感じた印象そのまま変わらないなあ・・・

美味しいみかんや、お茶やお菓子を頂きながら、積もる話に花を咲かせた。

傍らには楽しそうに遊ぶ子供たちとSさんの愛犬ブルーノ。

心のガソリンが満たされていくのを感じた。

いい時間を過ごさせてもらった。

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