中編からの続き
我が家にいらした初代オーナーは、我が家に一歩足を踏み入れるなり、当時と変わらぬ玄関の壁や大きな窓の様子をとても懐かしそうに眺め、何十年ぶりかのか再会に感激した様子で写真を撮っていらした。
その後、部屋を順にご案内していった。
和室だった2階の変化には、一緒にいらした息子さんと共に声をあげて驚かれた。また、私達が工夫して家族でリフォームしたことをとても感心され、褒めてもくださった。
現在はアトリエ兼、寝室になっている部屋は、元々はLDKだったので取り分け暮らしの思い出が詰まっているご様子。
当時と変わらぬというアトリエの窓のサッシを撫でるようにして手を触れながら、庭を眺め、沢山の写真を撮っていらした。
秋になると良い香りを漂わせる金木犀の大きな木、
私たちを季節ごとに楽しませてくれる庭の木々は初代オーナーから4代目の私達まで代々変わらず受け継がれてきたものだと知った。
また、この家を離れた30年ほど前の引っ越しの日には庭の木々が真っ白になるぐらい雪が積もり綺麗だったこと、温暖な静岡での滅多にない積雪で、家が別れを名残り惜しんでくれているように感じたのよ、とのエピソードも伺った。
そして、この家を手放したのは、街の方にお店と自宅とアトリエを併設した建物を新築した為で、発展的なお別れだったことを伝えてくださった。
お帰りの際、息子さんが運転される車に乗り込んだ後、わざわざ窓を開け「若かった頃に頑張って建てた家、幼かった子供が成長した家が今も大切に使われていることが分かって本当に嬉しかったわ。ありがとう。」とおっしゃった。
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突然巡ってきたかのような今回の嬉しい出会い、繋いでくださったMさんによると、実は初代オーナーが最近ご病気を患われたことがきっかけでご連絡があったのだそう。
入院・手術を経て今はご自宅で療養されている中で長年忙しくしてきた時間をふりかえるうちに、48年前に建てた家の現在を見てみたいとご希望されたとのこと。
そうした背景を伺うにつけ、何年も時が流れても尚、思い入れがある大切な場所を引き継いで住まわせてもらっているこの家との巡りあわせに感謝の気持ちになる。また、快適に暮らせるこの家を建ててくれた方に常々抱いてきた感謝の思いを直接伝える機会に恵まれて幸せだった。
繋いでくれたМさんに感謝。そして何より、嬉しい嬉しいお客様に、ありがとうございました。